みやげばなし(2002.5.12)

松島〜塩竈〜多賀城

その2



10:37本塩釜着。
観光案内所で塩竈神社への行き方を教えてもらう。
古い街並を歩きたいというと、
おじさんは丁寧に地図で教えてくれた。
そして「でも町はさびれてますよ…」と付け足した。

歩いてみるとたしかに商店街はさびしかった。
でもそれはどこの町でも同じだったりするのだ。
とくにここは仙台市近郊ということもあって、
商業は厳しいだろうなというのはぼくにも察しがつく。
古い街並とはいえごく普通の通りで、
ところどころ造り酒屋とか、
でっかい樽がある味噌屋など、
歴史を感じさせる場所があった。

塩竈神社までの長い石の階段を一気に上り、
七曲坂という奈良時代にできたという古い坂を降りた。
時間的に港までは無理だったのだが、
本塩釜駅の近くにちょっとした市場があったので、
ちょっと立ち寄り、写真を撮らせてもらった。
店のおじさんはいくらでも撮っていいよと言ってはくれたが、
何も買う気がないとわかると
あまりいい顔はしていなかった。
そりゃ当然だ。
撮影の時のよくない例だと思った。


本塩釜駅の近く・通称「やみ市」

11:35特快で仙台へ。
塩竈には1時間もいなかったことになる。

仙台では何の予定もなかった。
買い物をするつもりなど全くないし、
人込みにはできるだけ近寄りたくなかった。
ただ、せっかく昼前に仙台に着いたのだから
どこかで昼飯を喰おうかと思っていた。

いつかテレビで見た仙台駄菓子。
昔ながらの町並みが残っているところに行ってみたい。
ふと思って、
観光案内所のおばさんに訊いてみた。
ところが返ってきたのは、
「古い町並みなんて、もうないですよ」という返事だった。
「区画整理でみんな壊されてしまいましたから…」
ぼくのがっかりした様子を見ると、
もう一人のおばさんが、
もしかしたらここあたりにはまだ残ってるかもと言って、
地図を見せてくれた。
三百人町、五十人町、鍛冶町…。
「まだ昔の地名が残ってるんです。ここらへんを散策してみたら」
と教えてくれ、地図のコピーまでとってくれた。

三百人町の停留所でバスを降り、とにかく歩いてみる。
ところが、ぼくの期待する「古い町並み」というのは見当らず、
ここも盛岡と同様に新しいマンションがあちこちに建っている。
マンションとマンションの谷間に、
こぎれいな住宅があるのだが、
古い、というわけでもない。
道で地図を広げていたら、
通りかかったおばさんが、
「どこに行きたいの」と訊いてきた。
「古い町並みを…」と言ったら、
「たしかに、ここらへんは戦災に遭わなかったから残ってるんです」
なるほどそうか。
ぼくが求めていたのは、
江戸期の建物が連なっている町並み?
あるいは、
終戦直後の子どもがたくさん遊んでいた路地?

そんな場所はもう残っていない。
京都も、高山も、金沢も、
保存しようという強制力のもとに残されているに過ぎないのであって、
人々が生活する町はたえずその姿を変えているのだ。
だけど、
ノスタルジーを払拭しようとすると、
今の街の姿はあまりにもきたなく、無秩序に、
めいめい自分勝手に広がっているようで、
バランス感覚の欠けた、つまらないものになっているような気がしてならない。

三百人町から南鍛冶町、荒町と歩いていく。
どうも見覚えのある通りだと思ったら、
ここは弟が学生時代に住んでいた町だった。
五橋から地下鉄に乗って広瀬通へ。
飯を喰おうと思いながら仙台駅へと向かって歩くが、
店はどこも込んでいて入る気にならなかった。
結局、何も喰わぬまま駅のホームに出て、
そこのキオスクでポカリスエットを買って飲んだ。

13:40仙台発 小牛田行の普通列車。
13:53国府多賀城駅に到着。
この駅は、東北歴史博物館の前に去年造られた新しい駅だ。


駅側から見た博物館

博物館に入ったらまずレストランで飯をと思ったのだが、
サンドイッチで900円というぼくにとっては法外な値段だったのでやめた。
飯は後にして、
博物館を一から見て回ることにした。
旧石器時代からじょじょに歴史をたどっていく。
展示物の中に、
懐かしい駄菓子屋の建物があった。
こんなところで目にするとは…。

特別展として、
昔の観光旅行についての展示があった。
中でも興味深かったのは、
江戸時代の仙台の庶民が伊勢と金比羅に旅した行程が書かれた地図だった。
1ヵ月も2ヵ月もかけてゆっくりと旅をする。
そんな江戸時代の人々を想像して楽しかった。

多賀城は奈良時代の城冊があり、
東北地方の守備の要所となっていた土地である。
碁盤の目の町並みが形成されていたらしい。
博物館から歩いて数分のところに、
多賀城廃寺の遺跡があった。

この遺跡から博物館までは遊歩道で結ばれていて、
雑木林の中を戻った。
さまざまな広葉樹に囲まれて気持ちがよかった。

15:34国府多賀城発 小牛田行普通列車。
16:03小牛田着。
一関行の発車までは40分ある。
駅周辺を歩いてやっと見つけた食堂に入る。
ラーメンと半天丼のセット。
この時間にしてはちょっと食い過ぎ。
いわゆるグルメの旅ではないし、
食事の時間がまちまちになるのが癖だ。

16:43小牛田発 一関行普通列車。
17:31一関着。
土産にずんだ餅と胡麻すり団子を買う。
通りを歩いてみたけれど、
結局ベイシーを見つけることはできなかった。

18:02一関発 盛岡行普通列車。
19時過ぎに帰宅。

こう振り返ってみると、
何がおもしろかったのか。
何だかよくわからない旅だったけれども、
きっと日本人にしかできない旅、
自分にしかできない旅ではないかと思う。
しかたがない。
こんな感じでこれからも旅することにしよう。

最後まで読んでくれたあなた!
どうもありがとう。
今度はあなたの旅をきかせてください。



 

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